電子書籍 VS 紙の本、生き残るのはどっち?年末の大掃除でたどり着いた結論【斉藤啓】
どーしたって装丁GUY 第7回
■電子書籍はリセールできない
しかしながら、2025年現在、ぼくは紙の本しか買わなくなりました。電子書籍には最大最悪の、そして決して覆せない弱点を発見したからです。それは、
「リセールができない!!」
このことです。つまり、手放したくてもどこにも売れない。
序盤はめっちゃ面白いマンガでも、読み進めるうちにパターンが固定化してダレて飽きて、読むのやーめた!なんて経験はあるあるですよね。話題の本に飛びついて購入したはいいけど、自分には難解すぎ、とか、思ってたんとちがう、とか。なんだか文体が鼻につく…とかね。
こんな時、紙の本ならば、古本屋やらBOOK OFFやらにポイっと売っちゃえば即縁切り成立!どころかお金までもらえちゃう。そしてその本は、感性や好みにフィットする違う誰かが手にするチャンスとして生まれ変わる。なんとゆう完璧なサイクル!
「再販制度」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思いますが、これは、出版社が本の定価を定め、いかなる条件でもその価格で販売しなければならない、とゆう出版業界のルール。雑誌定期購読の際の割引や予約購入、フェア・イベントによる割引など、特例はありますが、基本はこの制度上で新刊本の売買はなされています。
しかし古本は『中古品全般』として扱われるので、古本屋はこの再販制度の適用外なのです。
何やらグレーな雰囲気のこの取り決め。しかし古本屋のおかげで絶版本や希少本、数百年前の本までもが現在でも気軽に入手可能である恩恵は超デカい。出版文化の歴史や文脈を保存する巨大アーカイブでもあり、じつは言論や表現の自由を支える砦でもある(ブラッドベリの華氏451のように)、まさに出版業界の影の主役ともいうべきなのが、この古本屋というマーケットでありシステムであります。
一方、電子書籍にはこれができない。
電子書籍の商品としての扱いは、本、ではなく、『情報』です。よってこちらも再販制度の適用外。紙の本と比較して価格が安めだったり、セールや無料サービスが多いのはそのため。リセールできないぶんのコストをそこでフォローしてるという捉え方もできますね。
とはいえ、単なる『情報』に過ぎないので、中古品という概念を持たず、古本屋のようなコンテンツ再生循環マーケットは存在しない(当然違法ダウンロードは犯罪!)。ゆえに、買ったら買いっぱなし。いらんものを半永久的に持ち続けるとゆう不健全な状態が、超じゃまくさっ。
そして、ちょっぴり怖いことをもうひとつ。電子書籍(とくにクラウド方式の)ならば、出版側・売り手側がその気になれば「コンテンツ粛清」だってやり放題だということ。青少年健全育成条例や児ポ法などで、表現規制が厳しくなるこれからの時代、とかくマンガはいつスケープゴートにされてもおかしくない、ってのは小声で言っときます。
もし絶版の烙印を押されたコンテンツは、その存在ごと永久に抹消されかねない。絶版、とはいかないまでも、『少年ジャンプ+』掲載の、藤本タツキ先生作『ルックバック』の『改変』騒動が、ひじょーにモヤったことは記憶に新しいわけで(知らない人はググってね)。じつは非常に危うい構造をはらむ電子書籍マーケット。やっぱ好きな本は紙で買っといた方がいいっすよー。
